福島第一原発 メルトダウンまでの50年
烏賀陽弘道著『福島第一原発 メルトダウンまでの50年』読了
たまたま見ていたら見つけたので、借りて読んだ。
前半はECCSがなぜ起動しなかったかを追いかけている。これについては実際のところはどうなんだろう。福島第一原発の事故の評価で、なぜそのような対応になったかはいろいろな事故調査が行われている。その中で、ECCSが動いたのか動かなかったのか、それはなぜかについていろいろな事故調査委員会では取り上げていないと言われているがそうなのか。
この辺りの調査報告をいくつか読んだが、一番分かりやすかったのは大前研一氏の書いた調査報告だった。あのとき、何が起きてその対処に何を行って、何が出来て何が出来なかったのかを、事故となった1号機、2号機、3号機と事故にはならなかった福島第二原発や女川原発との違いも含めて解説している。いかにも原発に関係した仕事をしてきた大前氏の見識がでていると思った。
過去を振り返って、あれができていなかったのがいけないと原因を求めるのは必要なことだろう。しかし、出来なかったことには何か理由があるのだろう。例えば、ベントがなかなか出来なかったのも、現場でそういったことをやっていなかったことに尽きるのではないか。人間がやることだから、初めてやることには時間がかかる。ちゃんと確認してやるから当然だ。それを何回もこなせば早くやることができる。だから訓練が大事。スポーツなんかとおんなじだ。練習でやってもいないことなんか本番でできるはずがない。だから時間をかけて練習をするのだ。運用とか運転とはそういうものだから、想定して訓練しておかなければ意味が無い。
もう一つは、経験だ。経験は机上で学習できるものではない。だから訓練するのだ。また、経験は学習できないが、想像することはできる。過去に起こった事象から想像することはできる。その中で新たな知見に基づいて対応を考えることが大事だ。今回の事故から学ばなければいけない。同じことを起こさないためには何をすればいいかはとことん考えて、少なくとも同じことが起きた時に最悪の事にならないような対処はしなければいけない。それが今回経験したことから得られる貴重な知識を活かすすべである。
こういったことがちゃんと出来なければいけない。それが今を生きる日本人に課せられた大きな宿題である。
福島第一原発 メルトダウンまでの50年――事故調査委員会も報道も素通りした未解明問題 | |
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