考証 福島原子力事故 炉心溶融・水素爆発はどう起こったか
石川迪夫著『考証 福島原子力事故 炉心溶融・水素爆発はどう起こったか』読了
本当に知りたかった内容を明確に示してくれる本にやっと出会った。
著者はすでにリタイアした原子力工学の研究者であるが、やむにやまれる気持ちで本書をまとめる気になったことが書かれている。
福島第一原発の事故では、これまで東電や国会、第三者などの書かれた事故報告書が出されているが、どれもこれも科学的な知識を元に何が起きたのかを明確に検証、論証してくれる報告書はなかった。実際に何が起きたのかがわからなければ、これから原子力発電所では何を注意してどうすればいいのかがわからないだろう。でも、今まで政府も何もやってこなかったのだ。
著者は科学的知見と今までの2つの大きな事故(チェルノブイリとスリーマイル)を元に1〜3号機で何が起きたのかを論証している。それは外部データ(例えば原発の入り口の放射線データなど)を突き合わせて実際に数値の変化が起きた時に何が起きていたかを突き合わせるなど、非常に論理的に説明している。
当然ながら、すべてが正しいというわけではないだろうけど、現時点では原子炉の状態は全くわからないので、20年後に原子炉の中を見ることができるまでは想像でしかない。それでも、過去の実例や経験からこうであろうということを明確に述べていて、非常に論理的な説明だ。おそらく90%以上は正しいだろう。
なぜ、2号機を除き、水素爆発が起こったのか。2号機ではなぜ水素爆発が起こらなかったのか。そして、サプレッションチャンバー経由でベントを行い、それなりの効果があったのだが、2号機はベントに失敗して、格納容器の破損まで起きている。それさえなければこれほどまでに広範囲の放射能汚染が起きなかったはずであるという論証はしっかりしていて、理解できる内容だ。
ぜひ、関係者は精読して今後の対策の糧にしてもらいたい。
起きてしまったことの責任を追求する作業は必要だが、事故から得られた知見を将来に活かす作業は人類に与えられた大きな課題である。その反省、課題追求をせずに同じ事故を起こしてしまうことは最も愚かなことである。じっくり読んでほしい。科学的検証とはこういうものである。
この本は読んでよかった。著者に感謝したい。
考証 福島原子力事故 炉心溶融・水素爆発はどう起こったか | |
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