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恋する創薬研究室 片思い、ウイルス、ときどき密室

喜多 喜久著『恋する創薬研究室 片思い、ウイルス、ときどき密室』読了
シリーズとなっているわけではないが、創薬もののミステリー。
主人公は薬学系の大学院生の女性。研究室で有機化学の試薬合成に取り組み、試薬を作ってはウイルスへの活性度を比較しているが、どちらかというと落ちこぼれ組。作る試薬がなかなかうまい活性度を発揮しない。
最近は創薬という計算の中から新しい有機化合物を化学合成で作って試すということが主流なんだろう。自分が大学・大学院の時には試薬合成をやっていた研究者はある意味やみくもの合成していた気がする。
ウイルスへの活性度も計算である程度は求められるので、それをもとに合成して確かめるという研究になっている。
有機物も分子量が多くなり、骨格が長くなるといろいろ難しいことが起きてくる。必ずしもひとつひとつ炭素をくっつけていけばいいわけでもない。骨格を形成するのは炭素、酸素、窒素あたりなので、それぞれが計算された様にうまく合成されるなんてことはなかなかできないだろうと思う。
本の中に出てくるプロスタグランジンの完全合成もいくつかのステップを経て合成できる様になってきたのだけれど、ある意味ひらめきも必要なんだと思う。それだけいくつものやり方がある中でうまくいく組み合わせを探していくのだから。コンピュータのお世話になるのもわかる気がする。

さて、ミステリーの中身はそれほど複雑ではないが、好きな助教授のピンチを救うために、急遽新しい化合物を合成することとなって、それをうまくやっていこうとする情景はなかなか面白かった。でも、一般の人はこの面白さとか実際の苦労とかわからないんじゃないかしら。
この創薬シリーズはまだ続くのかな。なかなかパターンも決まってきてしまって、ちょっと厳しくなったかな。個人的には非常に面白く読ませていただいているので、続けてほしいのだけど。

恋する創薬研究室 片思い、ウイルス、ときどき密室 (単行本)
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