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終わらざる夏

浅田 次郎著『終わらざる夏』読了
たまたま入った書店で平積みされている文庫本があったので、気になって読んだ。
終戦記念日には読むべき小説かもしれない。
改めて日本の軍隊が戦略も戦術もなく戦っていたことを再認識される。当時国家総動員法で召集令状で一般の方々も戦いの現場に行かなければならなかった事実も再認識された。大本営の作戦本部で動員計画を作り、計画の時点では数字だったものが下に落ちていくに従って、人名が記された名簿となり、役場ではそれを各家に赤紙として渡していく業務が描かれていく。こうやって計画を実現していくのだろうが、上の作った計画の本当の目的とか趣旨はなかなか下には伝わらないものだろう。
この小説では終戦間近に敗戦によって武装解除など戦勝国(主にアメリカ)との交渉も必要だからということで通訳の出来る特業種を選び、各部隊に配置させようとする。そのなかでも最も北に位置する千島列島の最北端。あとすこしでカムチャツカ半島というところにある占守島に配置される。前半はこの配属までのところを描いている。通訳だけ送るのは怪しまれるからと、医者と軍曹まで一緒に送るという。いろいろ考えているのだろうけど、残念ながら、敗戦処理にやってきたのはアメリカではなくソ連だった。ソ連が不可侵条約を破り、ポツダム宣言を受諾したことを知った後に領土にしようとして戦端を拡大してしまった。本当に不幸な戦争だったし、あまりにも遅すぎた終戦だった。
文中にも出てくるが、クラウゼビッツによれば戦争とは外交交渉の一つだという。要は交渉の中で有利に進めるためには戦争もあるが、そうだとするなら出口戦略がはじめからあるべきで、どこまでやったら終わることを考えておかなければならない。それは戦争だけでない。すべてのことで出口戦略が必要なのだ。それを完全に誤ってしまった。
第二次大戦時、戦闘で亡くなった人よりも餓死した人が多かったとかも言われている。戦線をむやみに拡大して、補給が間に合わなくなってしまったのだ。そもそも資源のない国なのだから、すぐに限界が来る。そういう結論は予想されたのに、神風が吹くみたいな幻想や根性論で戦争に突入していってしまった。今振り返るなら、もっといいやり方があっただろうけど・・・。
生まれて死ぬまで戦争がないなんて幸運なことと思わなければならないほど、過去には戦争が多かったし、今もどこかで戦っているのが人類だ。今の日本は幸せだと思わなければならないだろう。

この小説、単行本では上下巻、文庫本では3分冊になっている長い小説だ。途中はちょっとあまりに横道にそれるので中だるみしてしまうが、最後の1章は涙無くしては読めない。前に書かれているすべてのことはこの最後の章を書くためにあった様に収束される。途中はがんばって読むことをお勧めする。

終わらざる夏 上
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