死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
門田 隆将著『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日』読了
3.11で福島第一原発の所長をしておられた吉田さんが亡くなられたニュースが流れ、NHKのニュース9で著者の門田さんが出演されていたので、図書館で借りて一気に読んだ。
関係者から多くの話を聞いて、非常に良く事実をまとめられているノンフィクションだ。あのとき原発内ではなにが起きていたのか、何をしようとしていたのか、何が出来なかったのかがよくわかる。外からニュースからだけで状況を聞いていた人間にはわからない、現場ならではの苦労があったことが改めて良くわかった。
現場ではまさに、最悪の状態をいかに防ぐかの方策をひとつひとつ死にものぐるいでやっていたのだろう。それを遠く東京からTV会議であれこれ言うなんてナンセンスだ。
障害が起きている状況に置かれた人間でなければわからない感覚というものがある。自分もシステムの運用を担っているので、いくつかの障害の現場に遭遇したこともある。すべての情報は現場にある。そとからあれこれ言ってくるのは仕方がないことだが、一番正しいだろう判断は現場でしか出来ない。もし、現場の対応がおかしいというのなら、現場に来て状況をすべて聞いた後に判断をすべきだ。
今回の原発事故に関して言うなら、事業者である東京電力が事故処理を行うのは当たり前だし、一番詳しいのは現場の人たち。それに外からあれこれ言うのはどうか。同じ情報をもとに検討をするというならわかるし、同じ経験をした経験者から助言を行うというならわかるが、現場をよく知らない役人とか政府関係者があれこれ言うのはおかしいし、そもそも東京電力の本店がちゃんと機能していなかったことが一番の問題だった。
現在も事故処理が行われている中で、あと50年とか100年とかかかる作業をやっていくのは大変なことだ。ある意味、あの地域を国で買い取って、別の役割としてつかうとか抜本的な対策が必要なのではないかと思う。残念ながら、今生きている人たちが生きている間に元通りに戻ることはないだろう。だからこそ、もっと抜本的な対応が必要だと考える。
事故当時に非常にすばらしいリーダーシップで事故処理に当られた吉田所長のご冥福をお祈りしたい。
死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日 | |
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