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ブラックボックス

篠田節子著『ブラックボックス』読了
今回は食の安全と農業の崩壊の話。
ハイテク農業工場を造り、無菌の環境で植物に必要な栄養と人工的に作り出した光で光合成をさせて野菜を作る。方法的には工場で野菜を作るものだが、味がイマイチということで食品添加物をいれて味を調節する。
生野菜なのに添加されているという不思議な状況。これを食べた人たちに異常が起きる。そりゃそうだろうね。生じゃないのだから。薬付けの野菜ってことだ。でも実際には似たようなことは行われている。ハウス栽培された野菜だって似たようなもの。少しだけ環境を変えて植物が生育しやすくしたものだから。いまじゃキュウリも一年中スーパーに並んでいる。しかも、形の整っていること。まっすぐなキュウリしかスーパーには並ばない。長さもおんなじ。大丈夫なのかと心配になるね。ストレス感じながら育つんだろうね。だから露地物の味にはかなわない。
自分で野菜も作ってみるとわかる。虫もつくし、水やりを忘れるとちゃんと育たない。でも、おいしいね。露地物の枝豆の採り立てを塩ゆでにしたものなんざ、絶品だわ。冷凍物なんて足下にも及ばない。でも、そういうものはなかなか手に入らない。
現代人は変なものを食べているのが現実なんだろうね。だから体もおかしくなるんだよ。でも、仕方がないと言えば仕方がない。そういったものを選んできたんだからね。特に清潔で形の整ってきれいなものが好まれるから、形の整わない曲がったキュウリとか土のついた野菜なんかには手を出さないってことだね。
もう少ししたら、日本人の平均寿命は下がってくると思うよ。年金破綻は起きないんじゃないかな。その頃には年寄りはばたばた死んでいくと思うよ。こんなものばっかり食べているんだからね。

非常に面白いテーマの小説だった。ただ、ちょっと章割りが長くて疲れた。面白いテーマでそれなりに読みやすいんだけど、もう少し工夫してくれるともっとおもしろいと思う。そこだけちょっと減点。

ブラックボックス
ブラックボックス篠田節子

朝日新聞出版 2013-01-04
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