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検証 福島原発事故 官邸の一〇〇時間

木村 英昭著『検証 福島原発事故 官邸の一〇〇時間』読了
東日本大震災から2年。まだ終わらない福島第一原発での事故処理について、その最初の数日の原発の現場ではなく、官邸でどのようなことが行われていたのかを証言やメモから真実を明らかにしたルポルタージュ。
非常に丹念に関係者に証言を求めて、あのとき何が行われ、何が行われなかったかを明らかにしようとしている。これを読むと、いかに官僚側、関係する行政側が無力だったかがわかる。そもそも行政などは過去に行われたことを同じ様に行うことには力を発揮するのだが、新しいことをやるのには全然だめだ。今回の事故はまさに今まで起きなかったことに対する対応で、だれもどうすればよいかがわからなかった。そんななかで首相をはじめ官房長官、首相補佐官、経産大臣などの関係者はある意味よくやった方ではないか。結果論として、間違った判断になったこともあるかもしれないが、あのような大災害のなかですべてが正しい判断なんて出来るもんではない。そもそもの状況を作り出したのはこの40年もの原子力行政だ。関係者は反省をしなければならないし、刑事告訴されてもおかしくないだろう。
先日NHKでも放送していたが、福島第一原発の一号機の非常用冷却装置は作られてから40年間一度も動かしたことがなかったと。動かしたことがないから、動いたらどうなるかもわからない。動いているかどうかも確認できない。そんななかで作業にあたっていたので、間違った対応になってしまったのかもしれない。本当に訓練というものは大事だ。練習していないものは本番ではうまくいくはずがない。それを奇しくも証明してしまったようなものだ。万が一のことを考えて、訓練はしておかなければならない。
今回の地震、津波が100年に一度の災害なのか、1000年に一度の災害なのかわからないが、おそらく自分が生きている間にせいぜいあと1回あるかないかのことだろう。でも、もしものときにちょっとのことでもわかっていたら正しい、いやより良い判断ができるかもしれない。そのためには、その時のことを想像して備えねばならないだろう。今回のことは我々にとって大きな教訓にしなければならない。

検証 福島原発事故 官邸の一〇〇時間
検証 福島原発事故 官邸の一〇〇時間木村 英昭

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