仮想儀礼
篠田 節子著『仮想儀礼』読了
ある意味参りました。
読み始めた当初は新興宗教を立ち上げていった男の物語で、儲かっちゃっていい感じかと思っていたが、終盤は重くて重くて、どうなっちゃうんだろうと読み進めていったけど、結局は人殺しになってしまうというある意味決まった構図なのかと思ってしまった。
主人公は作家になりかけの男でたまたま出版社の担当に話を持ちかけられて、ゲームブックのストーリーを書き上げた。出来たのはいいが、その出版社がそもそも作品を売り出す気もなく、だまされたことがわかる。それからそのゲームブックをベースとしてチベット密教のエッセンスを入れ、宗教のサイトを立ち上げほそぼそ宗教もどきを始めるが、それが変なことにあたってしまう。大会社の社長がバックに付いてくれて会員がふくれあがり、左うちわになったところから転落が始まる。別の宗教団体から目を付けられ、仏像取引で不正があったことがわかり、あとはひたすら転落する状況に。
最後には数人の信者とともに逃げ回るが、教祖より信者の方がのめり込んで、ついに集団リンチで殺人を犯してしまう。奈落の底とはこのことか。
しかし、宗教団体の周りを丹念に書いている。そもそも宗教にのめり込む人は生活においてなにかすがりつきたくなる状況があるということなんだろう。人間は弱い生き物だから、すがりつきたくなる。そこにたまたまあった宗教にはまってしまうのかもしれない。
新しい宗教とはこうして生まれて、終わっていくのかと改めて思った。
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