異端の大義
楡 周平著『異端の大義』読了
著者の楡さんはアメリカの会社に在籍中に小説を書き、それがベストセラーになった後、小説家に転身した経歴を持つが、この小説にはその経験が非常に生かされたと思われる。質の良いビジネス小説だ。
総合家電メーカー東洋電器産業のエリート社員が、会社の経営不振からアメリカのR&Dを閉鎖して帰国するところから始まる。そのとき会社はリストラの真っ最中。ほどなくして岩手工場の撤退の責任者として赴任する。日本的同族会社の役員一族の横暴により、家電販売会社の営業部長に飛ばされて、退職するが、世界的な電機メーカーに中途入社し、その後、元の家電メーカーが身売りされることによって、買収されて元の会社に常務として復帰する。簡単にあらすじを書くとこういうことになるのだが。
中味は非常に奥が深い。同期入社の同僚が不倫したことを注意したことにより、地方に飛ばされることになったり、なかなか日本的でかなしくなる。
日本だけではないと思うが、同族会社はみんなどうしようもなくなっている。パロマもサンヨーも不二家も。なかにはしっかり経営されているところもあるが、同族会社は会社を私物化してしまっているところが多い。取締役会があっても機能しない。カリスマの社長の一言で決まってしまい、反論を述べるとスポイルされる。カリスマ社長が非常に優秀で間違いをしなければ大丈夫なんだけど、そんなにうまくいくわけがない。だれしも成功した後には会社を自分の息子に譲りたいと思うだろう。子どもがかわいいから苦労をさせたくない気持ちもよくわかる。だが、会社は個人の持ち物ではない。まあ、そうはいっても社長は振り返らないからそんなことはわからないだろうし、他人の言うことなんか聞かないだろう。同族会社は破綻するまでわからないということだろう。どこかの同族会社もどきもどうしようもないものだ。
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